Story 物語
この地には、受け継がれた誇りがある。遠い昔より、宮﨑の農家は黒毛和牛の繁殖を支え、その技術は幾世代にもわたり磨かれてきた。
仔牛を送り出す母牛たちは、ただ命を紡ぐだけではない。その体には、時間が刻んだ旨味が眠っている。その価値を見出し、新たな命を吹き込むのが、あまね和牛だ。
役目を終えた母牛は再肥育される。年月を重ねて深みを増した赤身が、さらに磨かれる。甘みをたたえた脂身と絡み合い、奥行きのある味わいが生まれる。
単なる牛肉ではない――そこには、宮﨑が培った繁殖の叡智が宿る。
そして、あまね和牛は、持続可能な未来とともに歩む。宮﨑を囲む海、有明海で育った海苔。その中には、市場に出せず行き場を失うものがある。だが、捨てるのではなく、生かす道がある。それを飼料として牛へと巡らせる。
海と陸とが結びつくことで、環境に寄り添う、新たな畜産の形が生まれる。
この和牛は、一人の手で育つものではない。繁殖農家、肥育農家、獣医、そして様々な農業に携わる者たち―― それぞれが知恵を絞り、汗を流し、思いを込める。そうして、ただの肉ではない、「愛の結晶」が食卓へと届く。
宮﨑の土が育て、宮﨑の人々が守る、誇り高き和牛。その物語を、ぜひ味わってほしい。